• 石鳥谷の全てがここにある!?

    石鳥谷図書館さんの企画展示の中でもかなり歴史のある『実はすごい!石鳥谷の「匠」展』
    毎回、石鳥谷地域で優れた技能を持った「匠」を取材し、関連図書と共にご紹介されています。

    石鳥谷図書館さんのご協力により、コラボ企画が実現✨
    石鳥谷の匠シリーズとして、石鳥谷地域情報発信サイト DO・RI・YAへ掲載させていただいております! ぜひお楽しみください。

    第47回 実はすごい!石鳥谷の「匠」展
    『木を切り 木を彫り 木と生きる』

    林業/チェンソーアート作家 小原 孝 さん

     今回の石鳥谷の「匠」展では、花巻市内で林業に従事しながら、チェンソーでアート作品を制作されている小原孝(こう)さんにお話を伺いました。

     チェンソーアートとは、1本の原木もしくは氷の塊からチェンソーを駆使し、ダイナミックかつスピーディーに繊細な作品を作り上げるもので、カナダやアメリカ合衆国を発祥に、1970年代から始まったとされています。

     小原さんは、県の伐木技術指導員、いわて林業アカデミー講師としても活躍されるかたわら、イベントでチェンソーアートのパフォーマンス披露等の活動もされるなど、林業の魅力を次の世代へ伝えるため、幅広く活動されています。

    岩手県伐木(ばつぼく)技術指導員について

    県内の林業の現場では、チェーンソーによる伐木作業中の労働災害の発生頻度が高く、林業従事者の伐木技術の向上が課題となっています。
    このため、県では高度な技術と優れた指導力を持つ「岩手県伐木技術指導員」の養成し、認定された指導員による伐木技術向上を目的とした研修会の開催を通じて、伐木作業中の労働災害を未然に防止する取組を進めています。
    令和6年12月1日時点で14名が岩手県伐木技術指導員に認定されています。

    岩手県「岩手県伐木技術指導員の認定」
    岩手県公式ウェブサイト, https://www.pref.iwate.jp/sangyoukoyou/ringyou/keiei/1024714.html
    (参照:令和8年1月23日)

     

     石鳥谷町東中島生まれの小原さん。高校卒業後、花に携わる仕事がしたいと思い、クレマチスなどの生産・栽培の現場で働いていました。やりがいを感じながらも、そのときちょうど地元で林業に挑戦する若者を募集していることを知ります。

     「やってみようかな」

     林業がどのような仕事かもまだよくわからないままの応募でしたが、これが若き日の小原さんと林業との出会いでした。それから23年間にわたり林業の現場に携わり、現在はリーダーとして素材生産を担当するチームを率いています。

     

     林業の仕事における“川上(かわかみ)・川中(かわなか)・川下(かわしも)”の区分のなかで、小原さんは川上、つまり原料を生産する森の現場で木を切り出す役割を担います。これに対して、製材所などで木材を加工・流通させる工程が川中、住宅や家具として消費者に届けられる段階が川下にあたります。

     現在、小原さんのチームは4名で構成されており、重機を扱いながら効率よく木を倒し、集め、切り分け、運搬のために積み込みを行っています。しかし、平坦な現場ばかりではありません。むしろ平地のほうが珍しく、急斜面や沢など、重機が入れない場所ではチェンソーが活躍します。

     「林業は本当に危険な仕事です。全産業の中でも死傷率が最も高いといわれています。毎日が命がけです」

     林野庁の資料によれば、林業の1年間に労働者1000人あたりに発生した死傷者数の割合は、全産業の約10倍。人数が少ない業界にもかかわらず事故が多いという現実があります。

     「うちのチームはみなさん優秀ですが、それでもやはり危険な仕事であることには変わりありません。日没や天候の影響も受けるため、常に余裕を持って動くよう心がけています」

     長年経験を積んでも、わずかなミスが一大事に直結することもあります。常に緊張感を持ち続けなければならない仕事です。

    チェンソー作業用の防護ズボンと安全靴。
    林業従事者がチェンソーを使用する際は、厚生労働省が策定したガイドラインに沿った安全対策を講じることが定められている

     

     始めたきっかけをたずねると「なんとなくです」と笑う小原さん。
     「チェンソーも丸太も身近にあったので、なんとなく作ってみようかなと思いまして。そしたら意外と形になったんです」

     そして、“制作を通して培った技術が、仕事でも役に立っている”という思いがけない副産物も生まれました。
     「見えない丸太の内部に刃を入れるんですけど、すごい振動の中でも、指先に“切り終えた瞬間”が伝わってくるんです」

     この感覚は現場でも役立ち、木を直接確認できない体勢で作業していても、指先の感覚を頼りに状況を把握できるようになったといいます。

     チェンソーへの興味が高じて、分解して組み立てたり、構造や技術について学んでいるうちに、その知識と技術が評価され、県の伐木技術指導員にも選ばれるようになりました。林業に従事し、チェンソーを扱う実務で得た経験が、アート作品の制作過程でさらに洗練され、その繊細な技術が現場での技術向上にも貢献しているようです。仕事と制作が、それぞれに良い影響を与え合っている様子がうかがえます。このことも、長く続けられているモチベーションの一つとなっているようです。

    様々な種類の刃がずらり。作品によって使い分ける

    後編へ続く…

    ※こちらの記事は、石鳥谷図書館にて2026年2月4日(水)~4月30日(木)に展示されたものを、許可を得て転載しています。


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